「みき」について
「みき」は、主に米や麦、粟などを材料に作られる飲み物です。琉球弧と呼ばれる、奄美から沖縄、宮古、八重山まで弓状に連なる島々で受け継がれてきました。
元々は神酒に由来しており、島々では、祈りと共に「みき」が島の神様に捧げられてきました。現在でも、豊年祭やウマチーなどの神事や旧盆などの行事には「みき」が欠かせない存在です。
また、いくつかの島にはみきのメーカーがあり、市販品をスーパーなどで手軽に購入する事ができます。
「みき」は、お米のヨーグルトとも称されており、最近の研究で、乳酸菌が豊富に含まれていることが分かり、健康飲料、発酵食品としても注目されています。
「それぞれの「みき」に個性」
「みき(ミキ)」には市販のヨーグルトに匹敵する数の乳酸菌が生息しており、乳酸等によって保存性が向上した発酵食品の一つです。また、「みき」の種類や発酵具合によって含まれる乳酸菌種や量が異なり、それぞれの「みき」に個性を与えています。今後の研究で整腸作用や免疫調節作用などが見つかるかもしれません。「みき」は植物原料のみで作られているため、乳製品にアレルギーがある人や動物由来の食品を避けている人でも飲むことができる乳酸菌飲料ですね。
暮らしの「みき」
家庭で手作りしたり、島の祭祀で作ったり、市販品を買ったり、お気に入りのみきメーカーさんがあったり、島人たちそれぞれの暮らしの中に「みき」が存在しています。
出来立ての甘いのが好き、発酵が進んだ酸味が出た「みき」が好き、あるいは、「みき」は苦手、と、好みもそれぞれです。
暑い暑い夏の日に、コップになみなみと注ぎ、ゴクリとのどを鳴らして飲んだ「みき」
幼いころ、オバァに手を引かれ連れていかれた御嶽(うたき)で飲んだ「みき」
豊年祭の綱引きの前に「クンチをつけなさい」と母から差し出された「みき」
婦人会で、汗だくになって、大鍋をかき混ぜて作った「みき」
その味、その製法や技は、先人たちが受け継いできた思いと共に、幾世幾人に渡り脈々と受け継がれています。
祈りのみき
みきは神事の際に供えられるお神酒が発祥とされています。琉球弧の島々で、いくつもの祭祀や神事、農耕儀礼が脈々と継承されており、その中でも「みき」が登場することがあります。
例えば、奄美群島の「クガツクンチ」、沖縄島の「ウマチー」や「ウンジャミ」、来間島の「ヤーマスプナカ」、石垣島の「プーリン」、竹富島の「タナドゥイ」など、 「みき」は神様への捧げものとして、島人と神々をつなぐ存在として、尊ばれています。
「みき」をつくり、神様へ捧げ、歌い、踊り、祝う祭祀は、島民たちの心の拠り所です、時代の変化とのなか、変容と許容をくり返しながら「みき」は、いつも祈りと共に共同体の中にあり続けています